生徒を伸ばす「褒め方」と「叱り方」――大切なのは、言葉とタイミング
「最近、うちの子が全然勉強しなくて……」
「何度言っても勉強しないので、つい怒ってしまいます」
保護者の方とお話をしているとき、こうしたご相談を頂くことがあります。
一方、塾で生徒たちと毎日接していると、
「最近、ずいぶん頑張るようになったな」
「以前よりも前向きになったな」
「テストの点数が大きく伸びたな」
と感じる瞬間もあります。
そんなとき、私たちが大切にしているのが、「褒めること」と「叱ること」です。
ただ、そのとき私たちが重要視しているのは、
「何を伝えるか」そして「いつ伝えるか」
この二つです。
今回は、私たちが生徒を指導する中で大切にしている「褒め方」「叱り方」、そしてその「タイミング」についてお話しします。
「やる気がないから叱る」は、本当に正しいのか
まず、やる気がなく、後ろ向きになっている生徒について。
宿題をやってこない。
授業中に集中していない。
テスト前なのに勉強しようとしない。
「どうせ無理」と最初から諦めている。
そんな姿を見ると、つい、
「ちゃんとしてきなさい!」
「そんなんでどうする!」
と言いたくなります。
もちろん、時には厳しく伝えなければならないこともあります。
しかし、ここで大切なのは、「なぜ、その生徒が後ろ向きになっているのか」を考えることです。
勉強が分からない。
頑張っているのに結果が出ない。
周りと比べて自信をなくしている。
何から手をつければいいのか分からない。
あるいは、単純に疲れている。
子どもが「やる気がないように見える」理由は、一人ひとり違います。
だからこそ、原因を考えずに「やる気を出せ!」「もっと頑張れ!」と言うだけでは、なかなか前には進みません。
叱るときは、「人格」ではなく「行動」を叱る
叱るときに最も気をつけたいのは、その子自身を否定しないことです。
「ほんまにダメだな」
「なんでできんのん」
という言葉では、生徒自身を否定してしまいます。
叱るのであれば、
「今日の授業への取り組み方はよくなかった」
「このまま何もしなければ、目標には届かないぞ」
というように、問題となっている行動や状況を具体的に伝える。
そして、何より大事なのが、
「じゃあ、今からどうする?」
と、次の行動に目を向けさせることです。
叱ることの目的は、怒りをぶつけることではありません。
生徒を正しい方向に戻すことです。
そして、叱る「タイミング」が大切
ここは、私たちが特に意識しているところです。
叱る必要があるからといって、いつでもその場ですぐに叱ればいいわけではありません。
例えば、授業中に明らかに集中していない生徒がいたとします。
その場で、「何やっとんや!」と強く叱ることもできます。
しかし、その日に何か嫌なことがあったのかもしれない。
分からない問題が続いて、自信を失っているのかもしれない。
あるいは、ただ一時的に集中が切れているだけかもしれません。
だからこそ、まず様子を見る。
それから声をかける。
それでも改善しないのであれば、落ち着いたところで本人と話をする。
「今日、どうした?」
と聞いてから、伝えるべきことを伝える。
場合によっては、その場ではあえて叱らず、授業後に二人で話をすることもあります。
人前で叱られることで、余計に意地になってしまう生徒もいます。
逆に、その場では、
「今のはよくないぞ。あとで話そう」
とだけ伝え、後からじっくり話すこともあります。
つまり、叱るべきことは叱る。しかし、最も伝わるタイミングを選ぶ。
これが大切だと考えています。
そして、これが本当に難しい……。
私自身、このタイミングを掴めず、反省することが日々あります。
叱った後には、必ず「前」を向かせる
もう一つ大切なのは、叱って終わりにしないことです。
「怒られた」だけで終わってしまえば、生徒は萎縮するだけです。
大切なのは、
「次はどうするか」
まで考えさせること。
叱ることで否定するのではなく、「次の一歩を促す」ように導きたいのです。
褒めるときは「結果」だけを見ない
では、頑張っている生徒を褒めるときはどうでしょうか。
テストで90点を取った。
成績が上がった。
苦手だった問題が解けるようになった。
そんなときには、もちろん、
「すごいじゃん!」
「よく頑張ったね!」
と褒めます。
ただ、それだけで終わらせないことも大切です。
例えば、
「前回間違えていたところが、今回できてるね」
「テスト前に毎日自習に来ていた頑張りが、結果につながったね」
「何回もやり直ししてたのがよかった」
というように、具体的に何が良かったのかを伝える。
そうすることで生徒は、「自分のどこを見てもらえたのか」を理解できます。
そして、その行動を次も続けようと思えるようになります。
「結果が出たとき」だけではなく、「努力している途中」で褒める
そして、もう一つ大切なのが、褒めるタイミングです。
褒めるのは、結果が出た後だけではありません。
むしろ、結果が出る前に褒めることが重要な場合もあります。
今まで宿題をやってこなかった生徒が、初めてきちんとやってきた。
自習に来るようになった。
以前は質問できなかった生徒が、自分から質問するようになった。
そんなとき、その瞬間に、その行動を認めて声をかけます。
「最近、ちゃんと宿題やってくるね」
「最近、自習に来て頑張っとるじゃん」
「よく質問しに来たね」
こうした声かけが、生徒にとって次の行動へのエネルギーになります。
「褒めるならその場で、叱るなら最も伝わるタイミングで」
もちろん、すべてがこの通りというわけではありません。
しかし、一つの考え方として、
「褒めるときは、できるだけ早く」
「叱るときは、最も伝わるタイミングを選ぶ」
ということを、私たちは大切にしています。
良い行動をしたのに、何日も後になってから褒めても、本人にはあまり響きません。
良い行動をしたその瞬間に、
「今のよかった!」
と伝える。
一方、叱る場面では、先生自身が感情的になっているのであれば、一度落ち着く。
生徒も興奮しているのであれば、少し時間を置く。
そして、「今なら伝わる」というタイミングで話す。
この違いは、非常に大きいと思います。
「褒める」と「叱る」の目的は同じ
一見すると、「褒める」と「叱る」は正反対の行為に見えます。
しかし、教育という視点から考えると、目的は同じです。
生徒を成長させること。
褒めるときには、ただ持ち上げるのではなく、「何が良かったのか」を伝える。
叱るときには、ただ怒るのではなく、「何がいけなかったのか」と「次にどうするか」を伝える。
そして、その言葉を届けるタイミングを考える。
それが大切なのだと思います。
子どもは、「自分を見てくれている人」の言葉を信じる
生徒との信頼関係は、一日でできるものではありません。
普段から生徒の様子を見て、小さな変化にも気づく。
頑張っているときには、きちんと認める。
間違ったときには、必要なことをきちんと伝える。
そうした積み重ねがあって初めて、
「この先生が言うなら、やってみよう」
という気持ちが生まれるのだと思います。
私たちが大切にしているのは、単に「優しい先生」であることでも、
「厳しい先生」であることでもありません。
生徒にとって、本当に必要なことを、本当に必要なタイミングで伝えられる先生であること。
それが、教育者として大切なことだと考えています。
子どもを伸ばすのは、特別な言葉ではありません。
一人ひとりをよく見て、必要なときには厳しく、頑張ったときには本気で褒める。
そして、どんなときでも、
「あなたのことをちゃんと見ている」
ということを伝える。
その積み重ねこそが、生徒の自信と成長につながっていくのだと思います。

